A氏 62歳 女性
主訴:10年前から耳鳴り出現し、徐々に難聴になっていた。耳鼻科を受診し改善できず、広告を見て来院した。
脈診:左・右尺部脈;弦細
中医診断:耳鳴り・難聴
病机:腎気虚
治療:鍼治療が始めてで不安が強いため、耳穴:内関と腎と耳中穴にてい鍼治療を施術、10分後大幅に耳鳴りが軽減した。1週間に1回程度、てい鍼治療を繰り返し3か月で耳鳴りが消失し聴力改善した。
診察前の耳鼻科での聴力検査の結果
治療後に耳鼻科を再診された際の検査の結果
B氏 82歳 男性
主訴:数年前より耳鳴り出現し、最近、耳鳴りがひどく聞こえが悪くなり人の話しが聞き取れない。耳鼻科を受診し老年性難聴と診断されたが、治療方法がないと言われた。友人の紹介で来院した。
脈診:左・右尺部脈;弦細
中医診断:耳鳴り・難聴
病机:腎精不足
治療:腎兪と関元にお灸、暈聴区に鍼施術し5分間隔で捻鍼し、20分後耳鳴り軽減した。2日後再診、以前より聞こえが改善している。同治療を10回行い、耳鳴り消失、聞こえが大幅に改善された。現在は体調維持のため、1か月1度来院治療している。
分析:耳は腎の竅(穴)であり、腎精は髄を生じ、脳は精髄で組成されている元神の府であることから、腎精が不足すると、耳鳴り・難聴などの症状が現れる。腎の兪穴である腎兪にお灸で腎精生成を促した。西洋医学でいうと大脳皮質の聴覚中枢の感覚低下がある。耳上の暈聴区は、大脳聴覚野の投射区であり、刺激すると大脳聴覚野の感度向上や耳の血流循環改善し内耳神経の興奮を落ち着かせ耳鳴りや聞こえの改善につながった。
C氏 79歳 男性
主訴:数年前に左耳突発性難聴を診断され、耳鼻科で治療し大幅よく改善した。この半年、耳鳴りがひどくなり左耳の聴力低下、イライラや興奮、不眠もみられ、広告を見て来院した。
脈診:左尺脈沈細
中医診断:耳鳴り・難聴
病机:心腎不交、陰陽失調
治療:耳穴:神門、胆筋、体穴:神門、三陰交。施術20分後、耳鳴りが半分以上消失した。2日後再診し、耳鳴り70%以上軽減し、不眠も改善した。イライラの症状も改善したとのことだった。その後5回続けて治療し耳鳴りが消失し、左耳聴力も改善した。
分析:この方は加齢により腎水が不足して心陰を滋養できないため、心陽を抑制できなくなり亢進し、耳鳴り・イライラ・不眠などの心腎不交の症状が現れていた。手首にある神門と足首にある三陰交の上下の配穴で、心火は下降して腎陽を助けて腎水が冷えすぎないように温めた。また、腎水は上がって心にいたり、心陰を滋養して心陽が亢進しすぎないように冷やした。それによって、頭にこもっている熱をおろして、耳鳴りなどの症状の改善につながった。
D氏 35歳 男性
主訴:1年前より左耳の圧迫感と耳鳴りが出現し、耳鼻科を受診。左耳突発性難聴だろうと診断され、1年間色々な薬を内服したが症状が変わらず知人の紹介で来院した。
脈診:左右尺部脈沈細
病机:腎気虚
治療:耳穴:腎、心包、神門、体穴:腎兪と曲池。鍼施術20分後、耳鳴り・圧迫感が大幅に軽減した。同治療を10回行い、耳鳴りは消失し、耳内圧迫感もなくなった。
分析:この方の明らかな原因はわからないが、問診より在宅勤務などコロナ禍での生活変容があり、それによるストレスから腎気虚の症状が現れていたと思われる。体穴の腎兪と曲池の鍼灸によって腎気虚の改善で耳の中の血流をよくして、興奮した内耳神経を落ち着かせることで症状改善につながった。
E氏 50歳 女性
主訴:2年前に新型コロナウイルスに罹ってから耳鳴り眩暈が出現し、倦怠感や不眠もあり仕事に集中できない、と知人の紹介で来院した。
脈診:左右脈弦細
中医診断:耳鳴り
病机:肝腎両虚
治療:耳穴:神門、体穴:神門、三陰交、太衝。施術20分後、耳鳴りが小さくなったと言われ、5回の施術で耳鳴りが消失した。継続して10回施術したところ、体の倦怠感や不眠もなくなった。
分析:新型コロナウイルス後遺症によるものか、体は肝腎両虚になっていた。肝は血をつかさどり、めまいや睡眠と深い関わりがある。耳は腎の竅(穴)であり、元気の源であり、体穴の腎兪と太渓、三陰交に施術により、肝腎両虚を改善し、それにより、耳鳴りや眩暈、不眠などの症状の改善につながった。